AI による革命的進化!Claris FileMaker 2025 AI 新機能

対象者: すべての Claris FileMaker ユーザー

こんにちは!Claris FileMaker でのアプリ開発、楽しんでいますか?

突然ですが、もしあなたのカスタム App が「話し言葉」を理解して、勝手に検索や集計をしてくれたり、社内マニュアルの内容をすべて覚えていて質問に答えてくれたりしたら…最高だと思いませんか?

「そんなの夢物語でしょ?」と思ったあなた、驚かないでください。次期バージョンの Claris FileMaker 2025では、その夢が現実になります!

今回は、FileMaker プラットフォームに訪れる「AI 革命」とも言える全貌を、
「①操作の革命」「②知識の革命」「③基盤の革命」
という3つのテーマに分けてご説明し、この記事を読めば、あなたのカスタム App 開発においてどんなシーンで AI が活用できるかイメージできるようになると思います!

(各機能の詳細な設定内容は後日しっかり調査して書きたいと思っています。)

① 操作の革命:開発しなくても「話すように」データベースを操る

まずは、日々の業務で最もインパクトが大きいであろう「操作」の革命から見ていきましょう。

まるで魔法!「自然言語で検索」

Claris FileMaker 2025で新しく登場するのが[自然言語で検索実行]という、まさに名前そのままのスクリプトステップです。

これを使えば、ユーザーが「家電の注文を検索して」と入力するだけで、AI がその言葉の意味を解釈し、カテゴリが「家電」のレコードを自動で検索してくれます。

これ、すごくないですか?もう複雑な検索画面をいくつも作る必要はなくなるかもしれません。「注文日の新しい順で」といった言葉を追加すれば、ソートまで自動でやってくれます。ユーザーはただやりたいことを言葉にするだけでよくなるのです。

集計もお任せ!「自然言語で SQL クエリを実行」

さらに驚くべきは、検索だけでなく「集計」も自然言語でできてしまうことです。

新登場の[自然言語で SQL クエリを実行]スクリプトステップを使えば、例えば「雑貨と本の売り上げは?」と入力するだけで、AI が内部で SUM() を使った SQL を組み立てて、合計金額をズバッと計算してくれます。

これまでの FileMaker の検索モードでは難しかった複雑な集計も、これからは AI に「お願い」するだけ。開発者は検索画面の実装から解放され、ユーザーはマニュアル要らずでデータを活用できる。まさに開発者とユーザー双方にとって嬉しい革命ですね!

開発者は楽に、ユーザーは直感的に、Win-Win の関係へ

開発者はこれらのスクリプトステップを使えるようにしておくだけで、ユーザーはいろんな検索を行うことができるので、カスタム App の使い方が劇的に変わります。

  • 開発者:
    複雑な検索画面の設計・実装から解放される!
  • ユーザー:
    マニュアルを読まなくても直感的にデータを探せる!

まさに Win-Win の関係。これからは、よりシンプルで使いやすいインターフェースのアプリを、もっとスピーディーに開発できるようになりそうです。

② 知識の革命:社内文書を AI 化する「RAG」で組織の頭脳を創る

次に、カスタム App を単なる「データの箱」から、「知識を持つアシスタント」へと進化させる「知識」の革命です。その主役が「RAG(検索拡張生成)」という技術です。

RAG(ラグ)ってそもそも何?

RAG をざっくり説明すると、「AI が知らない知識(情報)を参照し、より賢く回答を生成する AI の技術」のことです。

一般的な ChatGPT などの LLM は、社内限定の専門的な情報について知る由もありませんので答えられません。そこで RAG は、まず質問に関連する情報を社内文書などの「ナレッジデータベース」から探し出し、その見つけてきた情報をもとに AI に回答を生成させます。

これにより、AI がもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション」を防ぎ、自社の情報に基づいた信頼性の高い回答が可能になるわけです。

Claris FileMaker での RAG の仕組み

Claris FileMaker 2025では、「RAG 処理を実行」というスクリプトステップが追加されました。この RAG の仕組みがプラットフォームに統合されます。

  1. データ投入:
    社内マニュアルや規定集などのPDFファイルを、FileMaker Server 上に作られる「ナレッジデータベース(RAGスペース)」に登録します。
  2. 質問と応答:
    ユーザーが質問すると、FileMaker がレコード内から回答に必要な情報を抽出しその内容をAIに渡して、回答を生成します。

「出張時の宿泊費はいくらまで?」という質問に対し、AI が事前に登録された出張経費規定の PDF を正確に参照し「1泊1万円を上限としています」というような例です。

最近の AI であれば、ファイルを添付して同様のことができますが、FileMaker のデータをすべて AI に渡すことは不可能なので、RAG の仕組みはデータベースと切っても切れない AI になります。

「自然言語で検索」スクリプトステップと RAG の違い

どちらも AI に対して自然言語で質問するので、ユーザーが入力する文章にあまり変わりはありません。しかし、回答の根拠と回答方法が異なります。

  • 「自然言語で検索」スクリプトステップ:
    FileMaker のテーブル・フィールド構造から AI が考え、FileMaker の検索結果を表示する
  • RAG:
    FileMaker のレコード内の知識から AI が考え、AI が生成した自然言語で回答する

③ 基盤の革命:セキュリティと専門性を両立する究極の AI

最後は、より高度な要求に応えるための「基盤」の革命です。セキュリティが厳しい、あるいはもっと業務に特化した AI が欲しい、という開発者のための機能です。

データを外部に出さない!「ローカル LLM」

「ローカル LLM」は、その名の通り LLM をオンプレミスの自社サーバー上で直接動かしてしまう機能です。

これにより、機密情報などを一切外部のクラウドサービスに送信することなく、AI の処理を社内ネットワークで完結させることができます。インターネット接続ができない医療現場や LGWAN 接続系などの自治体、高いセキュリティが求められる金融・医療・研究機関などにとっては、まさに切り札となる機能です。

別途特集記事を書いています。
FileMaker Server 新時代へ。オンプレミスで動く「ローカルLLM」サーバー

AI を自社仕様に育てる「モデルをファインチューニング」

「モデルをファインチューニング」は、既存の AI モデルに自社独自のデータを追加学習させ、専門用語や業務知識に特化した専用 AI を育成する技術です。一般的な AI では理解できない業界特有の言葉も、ファインチューニングによって理解させることができます。これを使うと自分好みの優秀な AI を育成できるというわけです。

しかし先に断っておくと、データを与えてボタンを押すだけで FileMaker はできるようになったとはいえ、ファインチューニングは 使えるもの にはなりません。データの質を慎重に見極め、適切な量に調整し、何度も実験を繰り返しながら、モデルの振る舞いを観察し、根気強く理想の結果に近づけていく、データサイエンティストの職人技のようなプロセスです。

そのため現在ではプロンプトに毎回学習内容を入れる In-Context Learning がトレンドになっています。ChatGPT や Gemini といった AI の API ならたくさんのプロンプトを与えても瞬時に回答してくれるからです。

とはいえ、ローカル LLM だとマシンスペックや LLM モデルの制約などで In-Context Learning できるほどたくさんのプロンプトを与えられない場合もあるでしょう。FileMaker の新しいスクリプトステップ「モデルをファインチューニング」を使えば非常に簡単にファインチューニングできますので、根気強く理想の結果に近づけていくだけです。

まとめ

いかがでしたでしょうか? Claris FileMaker 2025に搭載される AI 機能は、私たちのカスタム App 開発の常識を根底から覆すほどのインパクトを持っています。

  • 操作の革命:
    話し言葉でデータ操作ができるようになり、誰もが直感的に使えるアプリへ。
  • 知識の革命:
    RAG によって社内の情報資産が AI アシスタントに生まれ変わり、組織の知識が最大活用される。
  • 基盤の革命:
    ローカル LLM とファインチューニングで、セキュリティと専門性を両立した究極の AI ソリューションが構築可能に。

Claris FileMaker 2025は、もはや単なるデータベース開発ツールではありません。「インテリジェントな業務システムを構築するための統合プラットフォーム」へと、大きな進化を遂げようとしています。

このワクワクするような未来を、ぜひ一緒に楽しんでいきましょう!

当ブログでは、この他にも Claris FileMaker 2025 のリリースに関する様々な記事を公開しています。
ぜひ、以下の一覧ページから気になる記事を探してみてください。

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