Community Live 16: Claris FileMaker 2024 (21.1) 登場 (2/2) サーバー編 – 最速レビュー

2 週連続で開催された Claris FileMaker 2024 (21.1) を紹介する Community Live の2回目として、今回はサーバー関連の新機能が中心に取り上げられました。

ライブ配信のアーカイブ: https://www.youtube.com/watch?v=8uLnQIZqrj0
Claris Community 内の Webinar 告知ページ: https://community.claris.com/en/s/question/0D5Vy00000OkYC9KAN/december-5-2024-community-live-claris-filemaker-2024-new-semantic-search-for-images

製品紹介ページの更新

まず、新バージョンの公開に合わせ、Claris の US サイト( https://www.claris.com )のデザインが変更されたことが紹介されました。

Apple のページを参考に、製品ごとに目的の情報を見つけやすいように、と見直されたそうです。

FileMaker の製品ページ ( https://www.claris.com/filemaker/whats-new/ )では、右上に配置された「Overview」、「What’s New」、「Tech Specs」から、それぞれの情報をすばやく参照できるようになりました。特に「What’s New」のページからは、新機能についての情報に簡単にたどり着けるようになっています。

セマンティック検索の進化

サーバー関連の新機能の 1 つ目はセマンティック検索の機能拡張です。まず、これまでの AI 関連機能でどのようなことができるかが改めて紹介されました。

セマンティック検索が、従来の検索と比較してどのようなメリットがあるかが説明されました。

意味で検索できるということの意義として、その言葉がデータの中に入っていなくても、その奥の概念が近ければ類似しているものとして抽出できるようになりました。

以下の CRM Solution の例では、コンタクト記録のデータベースで “boosting customer interaction (顧客とのやりとりを増やす)” というフレーズでセマンティック検索を行っています。

意味を理解できるということは、言語の制約を受けなくなるので、他の言語でも検索できるようになります。
例として、日本語の文章が入ったレコードも検索されています。

また、セマンティック検索の機能を活用して、手元の文書と会話するような UI の構築が可能になります。

Ronnie さんが次のデモファイルで示したのは、手元にある技術文書のテキストデータ (テキストファイル、あるいは PDF ファイルから抽出したもの) を FileMaker のテキストフィールドに蓄積したデータベースです。

そこに対して自然言語で問い合わせることができます。例えば、「 What are the new features in FileMaker 21.1.1? ( FileMaker 21.1.1 の新機能は何ですか?) 」という質問に対して、関連する情報を抽出し表示することができます。

まず、小さなかたまりに分割された情報の中から、どの部分に関連の情報があるかを示しています。

さらに、検索された関連情報を集約して回答文として提示することも可能です。

これは、埋め込み情報を用いたセマンティック検索と生成モデル(GPT-4 など)を組み合わせることで人間のように話し言葉による対話を実現しています。

どのような言葉で質問されても、それの意味を理解して人間らしい言葉で返す、という UI として LLM が利用されることになります。知識は手元のテキスト情報から返されることになるので、あくまで辞書の本体は、手元のテキスト情報のみです。

この仕組みは一般的に「RAG システム」と呼ばれているものです。(RAG = Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)

なお、ここで Ronnie さんが使用したサンプルファイル ”Document Chat” は、このあと以下の告知ページからダウンロードできるようにする予定とのことでした。
告知ページ: https://community.claris.com/en/s/question/0D5Vy00000OkYC9KAN/december-5-2024-community-live-claris-filemaker-2024-new-semantic-search-for-images

AI関連のアップデート

21.1 のアップデートで、オープンソース LLM を使用した画像によるセマンティック検索が可能になりました。

例えば以下の例では、”playing in the snow”(雪の中で遊ぶ)というフレーズで検索すると、スキーをしているところやシロクマなどの画像が検索されます。

従来の FileMaker でこれを実現しようとすると、あらかじめ人手によるタグ付けが必要だったり、タグ付けに用いる用語(シソーラス)を決めておく、などの仕込みに工数がかかるものでした。
セマンティック検索を用いれば、そのような事前の作業は不要になり、検索に用いるフレーズもあらかじめ決めた用語に縛られることがありません。

上のテキストの場合の例と同じように、表面的な言葉での検索ではなく、その奥にある意味に対して検索を行うので、(多言語対応のモデルであれば)違う言語に対しても検索することができます。
ローカルにあるオープンソースの LLM で稼働させることもできるため、データセキュリティが重視される場合でも導入が可能となります。

画像の中に何があるか、だけでなく”black and white” (白黒)のようなフレーズで、画像の属性でも検索が可能です。

検索フレーズの代わりに、画像を使って、その画像と似た画像を検索するということも可能です。これは、画像の埋め込み情報同士で類似度を評価するという操作になります。

なお、この画像に対するセマンティック検索のデモは、ノート PC 上にオープンソース LLM を置いて動作しているということでした。

また、スクリプトステップ「AI アカウント設定」で、接続先の選択肢として Cohere が追加されたことも紹介されました。

Q&A

Q&A では以下のようなやり取りがありました。

Q. 動画にも対応しているか

A. いいえ。静止画のみ

Q. 埋め込みデータが、データベースや索引のサイズに与える影響は?

A. 埋め込みデータはせいぜい 4-8kb であり、容量に大きな影響はない。



その他のサーバー関連のアップデート

その他のサーバー関連のアップデートとして、以下の改善点が紹介されました。

  • Data API のデータ通信量の 2GB user/month の制限撤廃
  • Admin Console から データベース内にサブフォルダを作れるようになった
  • スケジュールの UI を改良し、1 画面ですべてを設定できるようになった
  • サーバー上での PSOS をサポートし、スケジュール実行などに対応

サーバーのクラッシュからのサービスの復帰への対応として、持続的なキャッシュ ( persistent cache ) をオンにすることで、開いていたファイルだけを再開することが可能になったことも改善点として挙げられていました。

また、最近のサーバー関連の改善として、Admin Console で設定できることはすべて Admin API あるいは CLI で設定できるように整備されました。さらに今後の開発の方向として、OData をますます活用していくことなどが説明されました。

その他、今後のバージョンアップとして、Let’s Encrypt と直接通信して自動的に四半期ごとに証明書の更新を行えるようにするなどが計画されているとのことです。

サーバー関連の新機能については、以下のリンクから参照可能です。
https://help.claris.com/en/server-release-notes/content/index.html

日本語ページはこちら: https://help.claris.com/ja/server-release-notes/content/index.html

Developer Tools

前回も少し触れられていましたが、Developer tools に対する開発が進んでいることも紹介されていました。
現在、リリースノートのページの下の方から、4つのツールがダウンロード可能になっています。

このうち1つ目の Developer tool は、以前は FileMaker Pro (または、FileMaker Pro Advanced) のユーティリティとして提供されていたものが、サーバー用ツールとして再実装されたものです。

これに加えて、Data migration tool、 Upgrade tool などの DevOps 関連ツールの開発も継続して進められています。これらのツールがサーバー側の機能として標準装備されることによって、ファイルの自動生成やデプロイの自動化・高速化などでの将来の活用が想定されています。